【感想】ナイトメア・アリー

はじめに

原作である「ナイトメア・アリー 悪夢小路」をギレルモ・デモ・トロ監督が映画化した本作。なんでも原作小説は1946年に出版され、1947年に既に一度映画化されていたようですが…そんな名作小説を現代の技法で再び描き切った傑作…といった感じでした。

 

では、感想に行きましょう。

 

※ここからはやや映画のネタバレを含みますので、注意してください。

 

1.強欲さと傲慢さが身を滅ぼす…教訓に満ちた物語

本作は主人公であるスタンが父親の遺体と自宅を燃やして出奔…流れ着いたカーニバルの一座で読心術を学び、その技術とカリスマ性で富と名声を得るも、更なる富と名声を求めた挙句に失敗、破滅の道を転がり落ちていく…

ストーリーの全体像を大雑把に言ってしまえば以上なのですが、その見せ方が非常に上手い…!

 

序盤は主人公であるスタンが一座で読心術を学び、その才能で街のショーマンとして成功を収めて富と名声を得る「成り上がり」とも言えるストーリーとなっています。

しかしスタンはここで満足せず、周囲の反対を押し切って読心術を使った詐欺ともいえるビジネス(幽霊ショー)に手を出し始めるのですが…この辺りから明らかに雲行きが怪しくなっていきます。

戦争で息子を失った夫婦に「霊の声が聞こえる」と言って近付いたり、更なる富と名声のために「霊の召喚」にも手を出し…そして失敗。逃走の過程で躊躇なく依頼人とボディーガードを殺害します。

そして…実はスタンの父親も、読心術の師であるピートも、スタンが怨みや目的のために殺害していたことが分かり、彼が異常なまでに強欲で傲慢な性格であることが明らかになります。

そして上記の事件をきっかけに彼の人生は一転、妻に愛想を尽かされ、協力者には騙されていたことが判明、富も名声も失って辿り着いたのは…彼が読心術を学んだカーニバルによく似た施設。

そこで彼は、「見世物小屋で獣人(ギーク)にならないか?」という提案をされ、「それが私の宿命です」と皮肉な表情で、自らが欲望に塗れた獣人であることを受け入れて幕が閉じる…

 

この、最後のシーンの演技はすごく心に来るものがありました。この作品の一番の見せ場だと、個人的に思っています。

 

2.抜け出せない、抗えない人の本能

本作のスタンは上記の通りに自らの行いによって破滅の道を歩んでいくわけですが…初めの方は自分なりに「暴力的な父親」を嫌ったり、父親を破滅させた「アルコール」を飲まないようにしていたりと、理性を持って自らを制御しようとしていたんですよね。

 

それが、読心術で成功して街に出たあたりから妻に高圧的になり、幽霊ショーで儲け始めてからはアルコールにも手を出すようになり…成功するにつれ傲慢な本性を現すようになってしまう…本作は「人が成功すると変わってしまう」という一連の流れを、自然丁寧に描いていたと思います。

 

人生の絶頂からどん底に落ちてしまったスタンに対し、どこか他人とは思えない感情を引き起こしてくれたのは、脚本の丁寧さと俳優の演技の妙だと感じました。

 

おわりに

か、感想が書くのが難しい…!

鑑賞時点でいろいろ心に残ることが多くあった本作、私の中では間違いなく名作の一つだと思うのですが、それを上手く文章にするのが非常に難しい一作でした…!!

普段はどちらかというと「アクションどーん!」「CGすげー!」みたいな映画の方が見る機会が多いので、本作のような心を抉って来るような作品の感想を、もっと上手に書けるようになりたいですね。

 

今後も日々精進あるのみ!

 

以上!