【0.初めに】
Retunalを真エンディングまでプレイし、自分なりにシナリオ考察したのでメモを残しておく。
正直、合ってるかどうかは分からないけど百者百様の精神で見てほしい。
※なお、がっつりネタバレしているので注意!
目次としては以下の順番で記載する。
【1.物語の全体像】【2.詳細】【3.ループの先にあるものは?】
【1.物語の全体像】
まず初めに、本作の主要な登場人物はセレーネ(主人公)とテイア(母親)の2人だけ、さらにセレーネは宇宙になんか行っていない…
本作は「重度の精神疾患を患うセレーネの心の中の物語」だと思う。
時折出てくるヘリオスという子どもはセレーネの「精神的な別側面」…さらに言えば「夢や純粋さを表すポジティブな側面」だと考えている。
対照的にセレーネは「贖罪や罰を表すネガティブな側面」だと思う。
※ヘリオスはギリシャ神話で太陽の神を表し、セレーネは月の女神を表す。光と影っぽい!ちなみに、テイアはセレーネの母親という意味。(そのまんま)
物語の概要としては…
①テイアとセレーネを乗せた車が事故を起こし、セレーネは無傷、テイアが脊髄損傷で下半身不随になる。
②家庭環境が悪化、セレーネはテイアを恐れるようになる。
⇒成長したセレーネはテイアを地下室に幽閉し、殺害(餓死?)させる。
③罪の意識に苛まれ、自らを痛めつける精神的なループ(贖罪)に囚われる。
こんな感じ。
これだけだと理解してもらえないことも多いと思うので、①②③について以下にそう思った詳細を記載する。
【2.詳細】
前提として、セレーネは幼少期から「精神疾患」を患っており、「白い影(宇宙飛行士)が見える」などと言って母親のテイアを困らせている。
これは家の中に大量の薬があることからも推察できる。
①交通事故
事故に関しては「Chapter2のエンディング」と「3回目(?)の家イベント」で大体語られている。
まずはChapter2のエンディング。
車の後部座席に座ったセレーネが、運転しているテイアに「白い影が見える…?」と尋ねると、テイアは煩わしそうに車のバックミラーを操作してセレーネを視界から外す。
⇒セレーネの妄言に普段からうんざりしている様子が見て取れる。
テイアがラジオの調整のため視界を手元に向けたタイミングで車は橋に差し掛かる。
次の瞬間、目の前に白い影(宇宙飛行士)が現れてテイアは運転を誤り、2人を乗せた車は橋下の湖へと落下する。
⇒名言されていないが、このシーンはセレーネが「危ない!」などと叫び、驚いたテイアが運転を誤ったのではないかと思う。
理由としては、白い影が見えるのは精神疾患を持つセレーネだけであること、そしてセレーネ自身がこの事故を「罪」として捉えてることがある。
この事故の結果に関しては3回目(2回目だったかな?)の家イベントで「事故のニュースを流すテレビ」にて結果が語られている。
ノイズが多いが、「運転手のテイアが脊髄に大怪我」「セレーネは奇跡的に無傷で助かった」とキャスターが説明している。
②家庭環境の悪化と母親殺し
上記の事故によってセレーネとテイアの関係が悪化し、車椅子生活を過ごすテイアをセレーネが地下室に幽閉して殺害したことは、真エンディングに辿り着いた人なら既になんとなく理解していると思う。
「入ってはいけない地下室」「放置された車椅子」「餓死した母親の死体」…これらの意味することは明白…だと思う。
※死因が餓死との名言はないが、あの死体の造形は餓死っぽいと思ってる。
③贖罪の無限ループ
ここからが本作Returnalのプレイシーンである「無限ループ」となる。
4回目くらいの家イベントで「私(セレーネ)がヘリオスを撃ち落とした…私が全ての原因だった…?」と言うシーンがあったと思うが、これは「セレーネ(罪の意識)がヘリオス(夢を追いかける前向きな心)を打ち砕き、自身を逃れられない贖罪の無限ループへと引きずり込んだ」ことの暗喩だと思う。
また、同イベントでヘリオス(夢)が「ママ(自罰に苦しむ自分)を助けなくちゃ…」と言って望遠鏡で宇宙を覗き込むシーンがあるが、これはセレーネ自身が「自身の罪を忘れて夢を追いかけようとした」ことの暗喩だと思っている。
残念ながらその結果は…語るべくもないが。
結果としてセレーネは、このアトロポス(ギリシャ神話で「不可避」を意味する)という惑星で、何度死んでも終わることのない自罰の呪いに囚われることになる。
【3.ループの先にあるものは?】
さて、ここまでで死のループに至る大まかな考察は終わったと思う。
次はこのアトロポスでセレーネは何と戦っているのか?ということについて考察したい。
雑魚敵は「セレーネ(自身)を傷つける罪の意識」の数々だと考えられるため、セレーネは自罰の意識に傷つきながら立ち向かっていることになる。
その中で特に印象的な5体のボス…「フリーキ」「イクシオン」「ネメシス」「ヒュペリオン」「オフィオン」について考えたい。
「フリーキ」…ギリシャ神話で「恐怖の精神」を司る女神。セレーネが自らの内面と向き合うに当たって、まずはその恐怖心を取り払う(倒す)必要があったと思われる。
「イクシオン」…ギリシャ神話で「血縁を殺した罪で罰を受け、永遠に火焔車に縛りつけられる神」。母親殺しの自罰の象徴と言える。「自罰の象徴」を倒すということは、「自らを罪から解き放つ」意味合いがあるのかもしれない。
「ネメシス」…ギリシャ神話で「神罰の執行者」として扱われる神。イクシオンと同じく「罰の執行者」を倒すということで、「自らを罪から解き放つ」意味合いが強いと思われる。
「ヒュペリオン」…ヒュペリオンはギリシャ神話で「テイア(母親)の夫」を意味する。ただ、本作に父親らしき人物は登場していなかったこと、ピアノを弾いていたのは女性の手であったことを考えると、「母親であるテイアーの別側面」として考えるのが正解かもしれない。
死後もセレーネの頭の中に居座り続け、思い出の曲を弾き続けてセレーネを苦しめるこのボスを倒すことで、セレーネは自分が殺した母親という存在を忘れようとしたのかもしれない。
「オフィオン」…最後のボスにして、一番解釈が難しいボス。オフィオンは卵生神話(卵から宇宙が始まった(開闢)とする考え方)にて、宇宙卵を産んだ神※だとされているが…この神を「倒す」ことの解釈がちょっと難しい。
※正確には、オフィオンが孕ませた女神が産んだ。
このボスの解釈は人によって異なる気もするが…この「オフィオン」の名を冠するボスが最後に長年セレーネが囚われていた「白い影(宇宙飛行士)」の姿をすることも考えて、「全てのしがらみを破壊し、一から新しい宇宙(人生)を始める」ことの暗喩…というのはどうろうか?
ボスを倒した後に現れる「黒い球体」こそが宇宙卵であり、「新しい人生」の暗喩だとするならば、セレーネがあの球体に心惹かれた理由も分かるかもしれない。
上記のボスに対する考察も踏まえて考えると…
1回目のループ:自罰の意識を取り除くための戦い。
⇒障害を排除し罪の意識から逃れられるかと思ったが…過去を忘れた状態では完全には解き放たれなかった。
2回目のループ:自らの深層心理にまで入り込み、直視したくない過去の思い出と対峙する戦い。(2回目のマップは1回目より時間が経っている⇒過去の心理)
⇒過去の記憶と向き合うが…思い出すだけではダメだった。
3回目のループ:砕けていた太陽(夢)を取り戻した上で、再度過去と向き合う戦い。
⇒真のエンディングへ。
というのが、このReturnalというゲームが描いたセレーネの戦いなのではないだろうか?
【4.終わりに】
思いつくままに書いていたらめちゃくちゃ長文になってしまった…
ここまで読んだくださった方はありがとうございました。
正直、解釈の仕方はそれぞれ&これが正解だとも思っていませんので、もし他の解釈や補足などあればコメントください!(できればTwitterの方が気づくと思います!)
最後に、本ゲームの製作者には本当に感謝です!
めちゃくちゃ楽しかったです!!
【5.補足】
なんとなく気付いた小ネタなど。
・夢占いでの解釈「眼のサイコロ」「白い影」
家の中で時々出てくる「眼のサイコロを握り潰す」シーン。
「眼を握り潰す」というのは夢の中だと「直視したくない現実」や「知られたくない真実」なんかを意味するらしい。
また、「白い影(幽霊)」というのは夢に出てくると「心の奥底に潜む嫌な思い出」を暗示し、これを追跡することは「トラウマとの対峙」となるらしい。
さらに、自分が幽霊になる(真エンディングのラスト)夢は「新しい自分に生まれ変わること」を暗示しているらしい。
偶然かもしれないけど、中々の解釈一致だと思う。
・08:36
セレーネが電子レンジで「8分36秒温めて」と言ったり、家の中の時計が「08:36」で止まっていたり…ゲーム中には「08:36」という数字が頻出する。
これは上述した「テイアが交通事故を起こした時間」。
セレーネの心はこの瞬間に囚われているということだと思われる。
※ラジオの調整の際に一瞬時間が映る。